FEATURE 連載:
夜景評論家 丸々もとおの
「秘境夜景」

夜景評論家 丸々もとお氏 プロフィール

近くて、遠い。限られた人のみぞ知り、眺められる夜景。
それが…「秘境夜景」。

本州最北端の山奥でも無く、離島に隠れた穴場でも無い。
多くの人々が暮らし、働く都市に存在し、一泊数十万はするであろう、
ホテルのスイートルームという秘境。
まるで海外旅行に行けるほどの費用をたった一泊のために、
その地に到達できた者のみが味わえる、特別なご褒美である。

第1回

東京の天空を疾走する、銀河鉄道の夜。

ホテルニューオータニ
(東京・紀尾井町)

ホテルニューオータニ

 このホテルとの付き合いは古い。2000年前半、ワンフロアを貸し切った夜景イベントや宿泊プランを行っていた頃からだ。しかし、ここ数年は東京を離れる機会が増え、近くて遠い存在になっていた。今回の連載が始まる際、まず浮かんだのはその夜景だった。山の天気が変わるように夜景も日々変貌を遂げるが、今回の登頂ではどのような夜景を見せてくれるのだろうか。鼓動が高まる。
 カーテンを開けると、夜景のインパクトは相変わらずだった。美しいスカイラインを描く新宿高層ビル群を眺めるなら、間違いなく東京ナンバーワンの特等席だろう。都庁やドコモタワー(NTTドコモ代々木ビル)が五輪カラーで色が染まる光景は、急激に発展する丸の内や日比谷界隈には東京の主役を譲らないという意思が強く感じられ、赤坂御所や神宮外苑の深い闇が圧倒的な都市の輝きを助けていた。

ホテルニューオータニ

 ガーデンタワー37階。夜景を映す、黒いラバーに縁取られた横長の窓。まるで夜行列車の窓のようなデザインだ。しばらくすると、摩天楼の煌めきが遠ざかったり、近づいたりと不思議な感覚を得た。いやいや、別に夜景が動いた訳ではない。私の心が過去の記憶へと揺さぶられたのだ。何度も登った秘境だからこそ、心が揺れながら愛おしさが込み上げてくる。現在から過去へ。そして過去から未来へ。私は今、東京摩天楼という名の銀河を走る時空列車に乗車している。

ホテルニューオータニ

 驚くべきは、「秘境夜景」はひとつではなかった。ザ・メインにあるプレジデンシャルスイートには唖然とした。銀河鉄道を感じる客室とは異なり、足下まで広がる大判の窓。ダイニング、リビング、バスルームの空間が圧倒的な開放感に包まれていた。まるで山上の超高級山荘のようで、自らの夢を叶えた者のみが知る秘境と言えるだろう。と同時に、日々の喧噪に包まれ、多分なストレスで心が狭くなっていた自分を恥じてしまった。もっと、おおらかに。もっと、優しく。“視野は心の窓”とは良く言ったものだ。ゴージャスに視野が広がることで、自分ではない誰かさえも優しく包み込めるような感覚をもたらし、日常で狭くなった心の境を優に越えていった。

ホテルニューオータニ

 壁には鏡が配されていた。窓を見なくても、そこに夜景がある感覚。360度、美光に包まれているような。もちろん、眺める自分も夜景の中に映り込む。夜景と一体化したような自分だ。果たして私は、都市の煌めきに負けていないだろうか。寡黙に考え込んでしまうものの、一方で、この夜景は自分のためだけに輝いているような贅沢な時間に変わった。日々の生き方に自信が無くなったら、ちょっと無理してでもこの秘境に登るべきなのかもしれない。もはや価格云々の話ではない。自らの自信のためだけでなく、誰かのための輝かしい未来さえもたらす力を与えてくれるのだから。

■ホテルニューオータニ(東京)
〒102-8578 東京都千代田区紀尾井町4‐1
TEL. 03-3265-1111
赤坂見附駅下車徒歩3分
銀河鉄道に乗車したような夜景が楽しめる客室はガーデンタワーのカウントスイートで新宿側の客室。
一方、プレジデンシャルスイートはザ・メインの15階に位置。料金はホテルHPを参考。
公式サイト:ホテルニューオータニ(外部サイト)


プレジデンシャルスイートが位置するザ・メインの最上階にあるビュッフェレストラン「VIEW & DINING THE Sky」では、9月1日(土)より秋メニューを展開。ディナータイムには、新宿の夜景をはじめ360度のパノラマ夜景が楽しめ、料理を盛り立ててくれる。
◆ VIEW & DINING THE Sky 「THE Sky Buffet ~秋~」
期間:9月1日(土)~11月30日(金)
公式サイト:ビュッフェ&バー VIEW & DINING THE SKY(外部サイト)

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